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奈緒が退出しようと出口へ向かうと、
省吾が、
「ちょい待って!」
と言い、奈緒に手招きした。
「秘書室にこれ持って行って! 北海道土産! 奈緒が好きだって言ってたお菓子にしたよ!」
それを聞いた奈緒の瞳が輝く。
「あっ! 『白い恋文』ですかっ? キャアッ! 嬉しいっ!」
奈緒は思わず省吾の傍へ駆け寄る。
「他にももっと高級で美味いお菓子がいっぱいあるのに、奈緒はこれがいいってうんだもんなぁ...」
省吾はそう言って笑う。
しかし省吾の言葉は耳に入らないと言った様子で、
奈緒は袋の中を覗いていた。
「大きい箱以外に、ちっちゃいのが三つありますが?」
「それは日頃から世話になっている美人秘書チームの皆様へ一つずつどうぞ~!」
「うわーっ! ありがとうございますっ!」
いつも物静かですましている奈緒が、無邪気に喜んでいるのを見て、
省吾は思わずクスッと笑った。
「あっ、でも他のフロアーには?」
「それは原田さんが配ってくれているから大丈夫だ」
「承知しました! じゃあ早速さおりさん達に渡して来まーす!」
奈緒がそう言って出口へ向かおうとすると、
突然省吾が奈緒の手を掴み、グイッと引き寄せた。
「えっ?」
奈緒の身体がグラッと揺れて、
気づいた時には省吾の膝の上に座っていた。
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