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「いやぁ、これはどう見ても奈緒だろう! 君以外には考えられない!」 省吾の言葉を聞いても、まだ奈緒は笑っていた。 すると、突然省吾が奈緒を引き寄せて、奈緒の首元に顔をうずめた。 「えっ? ちょっ...ちょっと待って下さい...」 奈緒が焦って省吾を押しのけようとすると、 省吾は更に力を強めて奈緒に密着する。 「あっ、あの......」 「あと一分だけ......」 「............」 奈緒はなぜか言われた通りにじっとしていた。 普通だったら、こんなセクハラまがいの事をされたら 相手を突飛ばして逃げていただろう。 しかし、なぜかそうしない自分がいた。 奈緒の心臓の鼓動がどんどん大きくなる。 奈緒はどうしていいかわからず、 なるべく省吾を刺激しないようにじっとしていた。 一分ほど経ったところで、漸く省吾が顔を上げた。 「奈緒はいい匂いがするなぁ。お陰で充電バッチリだ!」 省吾は微笑んで言うと、やっと奈緒の身体から手を離した。 そこで慌てて奈緒が立ち上がる。 「えっと......」 何を言ったらいいいのか分からない奈緒に代わって省吾が言った。 「じゃあ鬼秘書さん! 今日も一日よろしくね!」 「はっはい......」 奈緒は真っ赤な顔のまま一礼をすると、 慌てて出口に向かった。 その時奈緒の横顔がチラリと見える。 「フッ...真っ赤になってかわいいな......」 省吾はそう呟くと、両手で髪をかき上げてから、 パソコンへ向かい仕事を再開した。
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