2

16/17

9344人が本棚に入れています
本棚に追加
/342ページ
それから徹の両親は、奈緒に対し急に強く当たるようになった。 本当は母子家庭ではなく、 きちんと両親が揃っている家庭のお嬢さんを嫁にするつもりだった。 だから、二人の婚約を私達は認めていなかった。 つまり、二人の間に正式な婚約関係は成立していなかったと... そう主張してきたのだ。 何もこんな時に言わなくてもいいという事ばかりを羅列し、 必死に自分たちの体裁を保とうとしていた。 その時、千葉の実家から駆け付けた母が奈緒を守ってくれた。 互いの家に、結婚の挨拶に行く日程も決まっていたし、 何よりも娘の奈緒は、徹さんからきちんとプロポーズをされた。 だから二人の間での婚約は成立していたと。 ただ、徹の両親が今大変な状況にいる事はよく分かる。 徹の娘に対する裏切りは許せないが、 彼が亡くなってしまった以上、責めても仕方がない。 だから、今は静かに娘に見送らせてやって欲しい。 そうすれば、婚約していた事は黙っていますからと 徹の両親に伝えた。 それを聞いた徹の両親は、明らかにホッとした様子だった。 そして、奈緒につい辛く当たってしまった事を詫びてくれた。 後日、奈緒は徹の葬儀に母と一緒に参列をした。 徹に婚約者がいる事は伏せられていた為、 奈緒に注目が集まる事はなかった。 しかし、会社から葬儀の手伝いに来ていた同僚達からは、 同情の目を向けられる。 奈緒は一般参列者として葬儀に行ったので、 徹の最期のお別れに立ちあう事は出来なかった。 そして更に辛かったのは、徹の親戚達が、 車に同乗していたみどりが徹の恋人だと思っていた事だった。 徹の両親が、みどりの親にどう説明したかは知らない。 とにかく、奈緒は徹との最期の別れを済ませると、 足早に母と葬儀会場を後にしたのだった。
/342ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9344人が本棚に入れています
本棚に追加