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この日、省吾は30階のフロアにいた。 この階は会社の主軸となる部署が集まっている。 省吾はCEO専用のオフィスを31階に持っていたが、 普段は経営戦略本部が入っているこのフロアにいる事が多い。 本来ならば、自分のオフィスでどっしりと構えていればいいのだが、 現場が好きな省吾は、ついついこのフロアに入り浸っている。 その結果、とうとう窓際の隅に、自分専用のデスクまで設置してしまった。 自分に用がある社員に、わざわざ31階まで来てもらうのも大変だ。 ここにいれば、即対応出来る。 だから、あえてこのフロアにいる時間を長く設けていた。 こんな所にも彼の合理性追求の姿勢がうかがえる。 省吾のデスクのすぐ隣には、 省吾の右腕、川田公平のデスクがあった。 取引先との電話を終えた省吾は、隣の公平に声をかけた。 「四時に、相川システムマネジメントに行ってくるわ!」 「了解! じゃあ今日の経営企画会議はお前なしでやるよ」 「ん、よろしく! で、夜は会食だっけ?」 「そう、六本木に七時な! 俺も同行するから!」 「オッケー! じゃあ今のうちに昼メシ行ってくるわ!」 「おっ? 今日はカロリーライトじゃないのか?」 「あんなもんばっかり食ってたら、ウサギになっちまうよ...」 「ばっかだなぁ! ウサギがあんなもん食うかよ!」 「食うだろ? じゃ行ってくるわ!」 省吾は椅子に掛けてあった上着を手にして出口へ向かった。 その後ろ姿を、笑いながら公平が見送った。
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