9267人が本棚に入れています
本棚に追加
/342ページ
その頃、省吾は公平の部屋にいた。
省吾は、奈緒と同じ店で買った手土産を公平に渡しながら言った。
「先週は助かったよ...サンキュー!」
「お前がいなくても問題はなかったから安心しろ! それよりそっちはどうだったんだ?」
「うん...奈緒と婚約した。彼女の親にも挨拶して来た」
それを聞いた途端、公平の瞳が輝く。
「そうかぁ~! それは良かった! お前もやっと結婚かぁ!」
「ああ。で、近いうちに一緒に住もうと思ってる」
「いいんじゃないか。善は急げってやつだ! 結婚式は?」
「それはこれから相談してからだな! とりあえずお前には報告だけしておこうと思ってさ!」
少し照れたような省吾の顔を見て、公平は感慨深い思いでいっぱいだった。
学生時代から苦労を共にして来た親友が、
いつまでも一人でいる事を、公平は心配していた。
省吾は仕事に集中すると、自分の事はそっちのけでのめり込むタイプだ。
若いうちはそれでもよかったが、そろそろ体調面が気になってくる年頃だ。
だから、妻が出来れば健康管理にも気を配ってくれるので安心だ。
公平はこれで漸くホッと出来るなと安堵した。
二人が結婚するという噂は、社内にあっという間に広まった。
奈緒が廊下を歩いていると、
「おめでとうございます」
「良かったですね! お幸せに!」
そんな声が、あちこちから飛んでくる。
社員達は省吾と奈緒の結婚に大賛成の様子だった。
それは、省吾が社員達から愛されている証拠でもあった。
その週、奈緒は幸せな気持ちに包まれながら、
いつもの仕事をこなしていった。
最初のコメントを投稿しよう!