9259人が本棚に入れています
本棚に追加
/342ページ
そして次の週の週末、奈緒の部屋には省吾がいた。
先週の週末、省吾は初めて奈緒の部屋を訪れ、泊まって行った。
だから、省吾が奈緒の部屋を訪れるのは今日で二度目だ。
省吾は、奈緒の手作り料理を食べた後、
テーブルの上にノートパソコンを出して、
引越し業者を選んでいる最中だった。
とにかく一日も早く奈緒を自分の家へ連れて行きたかった。
その為に、最速で引っ越しを請け負ってくれる業者を探している。
奈緒が食後のコーヒーを入れてテーブルの上に置くと、
「ありがとう」
省吾はそう言ってコーヒーを一口飲む。
「それにしてもさ、自分の部屋より奈緒の部屋の方が居心地がいいってどういう事なんだ?」
「それは変よ。だってうちの方が狭いし古いし...」
「でもさ、実際落ち着くんだよな。こういう可愛い雑貨があるからかな? 温かみがあるっていうのかな?」
省吾はそう言って、棚に飾ってある猫の陶器の置物や、
小瓶に飾ってある可憐な花をいじりながら言う。
奈緒は雑貨が好きだったので、厳選したお気に入りの雑貨達が
あちこちに飾ってある。
省吾はそれを気に入っている様子だった。
「じゃあ、引っ越したらこういうのを飾ってもいいの?」
「もちろん! 家の中は奈緒の好きなようにしていいよ! なんなら今度雑貨屋巡りでもするか?」
奈緒は、省吾の部屋はモデルルームのようにシンプルでスタイリッシュなので、こういった雑貨は処分していった方がいいのかもしれないと思っていた。
しかし、今省吾は飾ってもいいと言ってくれた。
おまけに雑貨屋巡りのデートまでしてくれるらしい。
「嬉しい! 行きたい!」
「ん、じゃ引っ越しが終わったら行くか! で、一緒に選んだ新しい雑貨を家に飾ろう!」
「うん!」
奈緒はニコニコして嬉しそうだ。
そこで、省吾が言った。
「でも、そうするには、一つ俺のリクエストも聞いてもらわないとなぁ...」
「えっ? なあに?」
「ほら...ココ!」
省吾はそう言うと、椅子を少し後ろに引いて、
自分の腿の辺りを指差した。
最初のコメントを投稿しよう!