9342人が本棚に入れています
本棚に追加
/342ページ
「秘書の件ですぅ~! 深山さん、ずっと秘書を募集されていますよね? 私、秘書検定三級持っているんで立候補しているんですけどぉ~!」
「あっ、そうだったね! うん、でもね、君は人事部に必要とされている人間だから、今はそっちで頑張ってもらわないと!」
省吾はニッコリ笑いながら、やんわりと断る。
どういう訳か、省吾は行く先々で頻繁に美沙に会うので、
今ではなんとなく顔見知りになり、
会えば美沙の方から話しかけてくるようになっていた。
省吾の返事を聞いた美沙は、
「えーっ、残念~! 私、もし秘書になったら絶対に頑張るのに~!」
と甘えた声で言う。
「ありがとう! でもとりあえずは今いる場所でしっかりと頑張って下さい!」
その言葉を聞いて、ムスッとしていた美沙だが、
次の瞬間パッと明るい表情に変えてから言った。
「じゃあ、今日はお昼をご一緒しませんか? 一階のカフェに行かれるんですよね?」
「悪い! 昼はちょっと外で打ち合わせなんだ...」
省吾はそう言って美沙の誘いをやんわりと断る。
「えーっ、なんか私を避けてます?」
「違う、違うよっ!」
省吾は苦笑いを浮かべながら、
手を顔の前でブンブンと振る。
ちょうどその時エレベーターが一階に到着したので、
省吾は正直ホッとした。
「じゃあね! 午後もしっかり頼むよ!」
省吾は美沙にそう言うと、出口へ向かって歩き始めた。
そんな省吾の颯爽とした後ろ姿を、
美沙はほっぺたを膨らませながら見つめていた。
最初のコメントを投稿しよう!