3

12/12

9349人が本棚に入れています
本棚に追加
/342ページ
実は美沙は、人事部にいる特権を生かし、 深山省吾に近づく女性達を、ことごとく排除していた。 時には上司に、嘘の報告や真実でない事をでっちあげ、 秘書の面接に来た女性達を、ことごとく不合格へ追いやる。 例えば、面接を待っている時の態度が酷かったとか、 面接の時間ギリギリに駆け込んで来たなど、 あからさまな嘘を人事部長へ告げ口するのだ。 省吾の秘書が今までなかなか決まらなかったのは、 この美沙の暗躍があったからだ。 しかし、その事には誰も気づいていない。 そんな事は何も知らずに、 奈緒は、無言で前を歩く美沙について行く。 『ここの社員は、結構クールな人が多いのかしら?』 美沙の冷たい態度を見て、奈緒はそんな不安を持つ。 しばらく歩くと、面接会場となる会議室の前に着いた。 美沙はノックをしてからドアを開け、顔だけ中に入れてから 声をかけた。 「ご案内してもよろしいでしょうか?」 「お願いするわ!」 室内からは女性の声が聞こえた。 すると美沙はくるりと奈緒の方を向いてから、 「では、こちらへお入り下さい」 と言って、奈緒に中へ入るよう促した。 奈緒は覚悟を決めると、 「失礼します」 と言って一礼をしてから、部屋の中へ入って行った。
/342ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9349人が本棚に入れています
本棚に追加