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実は美沙は、人事部にいる特権を生かし、
深山省吾に近づく女性達を、ことごとく排除していた。
時には上司に、嘘の報告や真実でない事をでっちあげ、
秘書の面接に来た女性達を、ことごとく不合格へ追いやる。
例えば、面接を待っている時の態度が酷かったとか、
面接の時間ギリギリに駆け込んで来たなど、
あからさまな嘘を人事部長へ告げ口するのだ。
省吾の秘書が今までなかなか決まらなかったのは、
この美沙の暗躍があったからだ。
しかし、その事には誰も気づいていない。
そんな事は何も知らずに、
奈緒は、無言で前を歩く美沙について行く。
『ここの社員は、結構クールな人が多いのかしら?』
美沙の冷たい態度を見て、奈緒はそんな不安を持つ。
しばらく歩くと、面接会場となる会議室の前に着いた。
美沙はノックをしてからドアを開け、顔だけ中に入れてから
声をかけた。
「ご案内してもよろしいでしょうか?」
「お願いするわ!」
室内からは女性の声が聞こえた。
すると美沙はくるりと奈緒の方を向いてから、
「では、こちらへお入り下さい」
と言って、奈緒に中へ入るよう促した。
奈緒は覚悟を決めると、
「失礼します」
と言って一礼をしてから、部屋の中へ入って行った。
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