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面接官の自己紹介が終わった所で、 いよいよ採用面接がスタートした。 「じゃあ、早速履歴書をお預かりしてもよろしいでしょうか?」 人事部長の杉田はそう言うと、奈緒の前まで歩いて来た。 奈緒は慌ててバッグから履歴書を出すと、それを杉田に渡す。 すると杉田は「ありがとうございます」と言って、 部屋の隅にあるコピー機の前へ行くと、 履歴書のコピーを取り他の三名へ配った。 その際、コピーは後でシュレッダーにかけますからと 奈緒に一言伝えた。 それを受け取った三名は、 しばらくの間じっと奈緒の履歴書に目を通す。 そして、まず人事部長の杉田から質問が来た。 「えっと...前の会社を辞めた理由は、一身上の都合とありますが、 それは具体的には?」 「あ、はい......」 奈緒はこれは絶対聞かれると思い、答えをちゃんと用意していた。 「前の会社では、とてもやりがいのある仕事をさせていただいておりました。新卒で入社してから10年弱、ちょうど区切りの年でもあり、ここで少し違う世界を経験してみたいと思い、今回転職の意志を固めました」 それを聞いた杉田が言った。 「そうですか...チャレンジ精神があるのは良い事ですね! 思い切って違う世界を覗いてみるのも悪くないですから!」 それを聞いた経理部長の村田が茶化すように言った。 「じゃあ杉田ちゃんも思い切って違う世界に羽ばたいてみる?」 と言ったので、他の二人が声を上げて笑った。 すると杉田が、 「やめて下さいよ~、まだクビにしないで~! 子供が生まれたばかりなんですからぁ~!」 と言ったので、今度は杉田を含めた三人が声を出して笑った。 思わず奈緒も笑いそうになったが、自分は面接を受けている側だと気付き、 慌ててすまし顔に戻る。
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