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「10年近く勤めると、次にステップアップしたくなる気持ちはよく分かります。実は私も転職組なものですから...」 杉田は穏やかな表情でそう言ったので、奈緒は頷いた。 次に村田が奈緒に質問をした。 「経理はまだ少ししか経験していないみたいですが...あ、でも簿記二級を所持していらっしゃるのね...」 「はい。経理部の経験はまだ日が浅いですが、その前は営業推進本部に所属していました。そちらでは主に、男性社員のサポート業務をしておりました」 「サポートって言うのは?」 「はい....外に出る事の多い男性社員を、内側で支える感じですね」 「そうなのね! それって内助の功的な感じかしら? そういえば麻生さんは、秘書検定の一級も持っていらっしゃるのね?」 「はい...それは社会人二年目に取りました」 「へぇ~...お勤めしながら資格取得なんて偉いわぁ...」 村田は感心したように呟く。 その時省吾は、『秘書検定一級』というワードに強く反応する。 なぜなら、ちょうど省吾は秘書が欲しいと思っていたからだ。 そこで省吾が口を開く。 「今日は経理の採用で面接に来ていただきましたが、それがもし秘書の仕事に変更になっても、うちに来ていただく事は可能ですか?」 省吾の言葉を聞いた他の三人が、「えっ?」という顔をする。 そして、経理部長の村田が慌てて言った。 「ちょっとちょっと省吾ちゃーん、今日はうちに入ってくれる人の面談なのよぉ~! 横取りしないで~!」 「そうだぞ省吾、今日は経理部の穴埋めの募集で...」 公平も慌てて言った。 しかし省吾は気にする様子もなく、にっこりして奈緒の答えを待っている。
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