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フロントガラスには、
先ほどよりも粒の大きくなった雪が降り積もり始めていた。
「三月にこの大雪かよ......」
省吾はそう呟きながら、既に真っ白になっている砂浜に目をやった。
すると、誰もいないと思っていた砂浜で何かが動いた。
『人か?』
そう思いながら、目を凝らして波打ち際の方を見つめた。
すると、右前方に、人がいるのが見えた。
オフホワイトのニット帽に、同じくオフホワイトのダウンコートを着ている。
降りしきる雪に紛れていたので、今まで気づかなかったようだ。
『こんな大雪の中、何をしているんだ?』
気になった省吾は、じっと見続ける。
よく見ると、そこにいたのは女性だった。
オフホワイトのニット帽から、長い髪が見えている。
向こうを向いているので顔はよく見えないが、
おそらく20代~30代くらいの女性だろう。
女性は、腰を折り曲げ屈んだ姿勢で、
波打ち際の辺りを行ったり来たりしている。
落とし物を探しているような雰囲気だ。
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