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いきなり徹の話題が出たので、奈緒は一瞬黙り込んでしまった。
それに気づいた加賀が言った。
「ごめんごめん...徹の事なんて持ち出すべきじゃなかったな...申し訳ない...」
「いえ...お気になさらずに...」
「でも、新しい会社で全く違う業務に就くというのも、なかなか刺激的でいいじゃないか! 覚える事が多くて大変かもしれないが、余計な事を考えなくて済む。忙しくしているうちに、いずれ『時薬』が解決してくれるよ...君ならきっと大丈夫だ! 頑張れよ!」
『時薬...』
そのフレーズはとても印象的だった。
本当に時間が解決してくれるのだろうか?
それから奈緒は、加賀を心配させないようにあえて明るい声で、
「ありがとうございます。一生懸命頑張ります!」
と言って、加賀との電話を終えた。
奈緒はそのまま駅構内へ入ると、
帰りの電車が来るホームへ向かう。
電車を待ちながら、今後は母・聡美へメッセージを送った。
【お母さん、就職無事に決まりました。一応報告ね!】
今の時間帯、聡美はきっとパート中だ。
用件だけ伝えて、夜に電話をかける事にする。
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