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奈緒はじっとホームに佇んだまま、先ほどの面接を思い返していた。
それにしてもびっくりした。
あの時海で会った人が、あの会社の経営者だったなんて...。
どうりで、なんとなく見た事がある人だと思った訳だ。
おそらく奈緒は、省吾がメディアの媒体に出ている所を
何度か見ていたのだろう。
だから海で会った時、見覚えのある顔だと感じたのだ。
『ドラマのような偶然って、本当にあるのね...』
奈緒はそう思うと、思わずフフッと笑う。
心から笑えたのは、久しぶりのような気がした。
不思議な事に、昨日まで鎧のように重かった身体が、
少しずつ軽くなっているような気がした。
『神様がくれたチャンス......』
そんな言葉が奈緒の頭を過る。
『そうよ...きっと神様がチャンスをくれたのよ! だから、もう一度だけ頑張ってみよう!』
奈緒はそう思いながら軽やかな足取りで、
ホームへ滑り込んで来た電車へ乗り込んだ。
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