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翌日からの奈緒は、とにかく忙しかった。
引っ越しへ向けて動き始めたからだ。
今奈緒が住んでいる場所は、神奈川県の海に近い街だ。
今までは、以前勤めていた会社へ一つの路線で行く事が出来た。
道のりは長かったが、
奈緒の家の最寄り駅はその路線の始発駅だったので
会社の最寄り駅まで座って行ける。
会社から帰る時も始発駅だったので、前の方に並べば座って帰れたし、
飲み会等で遅くなったり疲れたりしても、
特急料金を少し払えば、指定席で座って帰る事が出来た。
大学時代から住んでいたマンションは愛着があり、
社会人になってもそのまま住み続けていた。
しかし、今回はさすがに引っ越そうと考えている。
引っ越したいと思った一番の理由は、
徹との思い出の場所から離れたいと思ったからだ。
徹は奈緒と同じ路線に住んでいた為、
土日は奈緒の家で過ごすことが多かった。
だから、徹の思い出だらけの家や街からは一刻も早く離れたいと思っていた。
そしてもう一つの理由は、
新しい仕事を始めたら相当疲れるだろう。
若い頃とは違い、体力も気力も昔よりはかなり落ちている。
だから、少しでも職場の近くに住んで、
通勤の負担を減らしたいと思っていた。
そうと決まると、行動は早い方がいい。
仕事が始まるまでの間に、なんとか引っ越しを終えてしまいたかった。
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