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奈緒が新しいマンションへ越してから三日経った。
引越し当日に積み上げられていた段ボールはほぼ片付き、
届いたばかりの新しいベッドやソファー、
そしてダイニングテーブルが部屋に新鮮さを与えている。
この日、奈緒は家事を済ませた後、
来週から始まる仕事についての準備をしていた。
秘書検定を持っているとは言え、
資格を取ったのは20代の前半だ。
かなりの時間が経っているので、勉強した事もすっかり忘れている。
だから、もう一度復習しておこうと思った。
紅茶を入れて、当時のテキストを開きつつ、
ネットで秘書業務についてを調べ始める。
二時間ほど集中した後、奈緒は勉強の手を休めた。
そして新しい部屋を見回しながら物思いに耽る。
その時頭の中に、あるシーンが蘇って来た。
それは、奈緒が徹からのプロポーズを受けた後、
二人で結婚後の新居について相談している時の場面だった。
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