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屈んだ女性の背中と頭には、かなりの雪が積もっていた。 その量からは、かなり長い時間同じ姿勢をとっていた事がうかがえる。 『雪ダルマになっちまうぞ! こんな大雪の日に、一体何を探しているんだ?』 そう思いながら、省吾は女性の事が気になりそのまま見ていた。 その時、灰色の雲に覆われていた空から、 一筋の光が差し込んで来た。 舞い落ちる雪がその光に反射し、銀色の輝きを放ち始める。 途端に、辺り一面がキラキラと輝く銀世界になった。 それに気づいた女性は、屈めていた身体をまっすぐにすると、 銀色の雪が舞い降りて来る空をじっと見つめた。 「銀雪(ぎんせつ)か......」 省吾は呟く。 その時、女性が手で目元を拭った。 省吾には、女性が涙を拭いているような仕草に見えた。 『泣いていたのか?』 次の瞬間、省吾は車のエンジンを切り、 助手席に置いてあった傘を手にして車の外へ出た。
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