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その日の午後、奈緒は少し早めに家を出て、 千秋と会う前にデパートへ寄る事にした。 目的は、新しい職場で着る服を 少し買い足しておきたいと思ったからだ。 働き始めたら、当分忙しくて買い物に行く時間もないだろう。 だから、今のうちに揃えておきたかった。 新しい職場は皆おしゃれだった。 面接の後、エレベーターで何人もの社員と一緒になったが、 その時見た女子社員達は、皆とても素敵に輝いていた。 自分もあんな素敵な社員になりたい。 あんな人達の一員になりたい。 奈緒は素直にそう思った。 そして、経営者の秘書として働くなら、 それなりにきちんとした格好をしなくてはとも思っていた。 だから、今日は少し質のいい品のある服を、 いくつか揃えようと思っていた。 そこで奈緒はふと気付く。 『無気力だった自分が、おしゃれをしたいと思えるようになっただけでも進歩だわ...』 奈緒はそう思うと、思わずフッと笑みを浮かべた。
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