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デパートに着いた奈緒は、 気になった店を一つ一つ丁寧に見ていった。 その中で、何着かの素敵な服を見つけた。 きちんとした場所へ着て行けそうなスーツ、 上品でエレガントな膝丈のスカート、 足のラインが綺麗に見えるパンツ、 その他にも、 手持ちの服にも合いそうなブラウスやサマーセーターなど、 気に入ったものがいくつも見つかった。 新しい会社では、秘書もオフィスカジュアルでOKだと 人事部長の杉田が言っていたので、 当面はこれだけ揃えれば大丈夫だろう。 奈緒は、満足のいく買い物が出来たので、 とりあえずホッとした。 買い物を終えた奈緒が腕時計を見ると、 約束の時間まではまだ少しあったので、 デパート内のカフェで少し休憩をする事にした。 平日午後のカフェはとても空いていて、 ゆったりとした時間が流れている。 カフェにいる客は、ほとんどが買い物途中のマダム達だ。 女性同士でお喋りを楽しんでいる客と、 一人でゆったりお茶をしている客がちょうど半々だった。 奈緒がカフェオレを手にしてふと窓際を見ると、 ベビーカーに乗った赤ちゃんを連れた奈緒と同じ歳くらいの母親が 一人静かにコーヒーを飲んでいた。 赤ちゃんは、可愛らしい寝顔をして、 すやすやと安らかな寝息を立てていた。 『私がもし徹と結婚していたら、数年後にはあんな感じだったのかな?』 奈緒の頭にはそんな思いが過る。
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