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束の間の休憩を終えた奈緒は、 約束の時間が近づいて来たので、 カフェを出て待ち合わせの場所へ向かった。 イタリアンの店に入ると、千秋はまだ来ていなかった。 予約している旨をスタッフに伝えると、 すぐに予約席へ案内してくれた。 奈緒が椅子に座って五分後に、千秋がやって来た。 「ごめんごめん、少し遅れちゃった!」 「私も今来たとこだよ。忙しいのにごめんね...」 「ううん、私もそろそろ奈緒に会って話したかったから...」 千秋はそう言うと、 久しぶりに会う親友の顔をじっと見つめる。 千秋の目からは、奈緒が少し痩せたような印象を受けた。 ずっと塞ぎ込んでいた親友が、今日この場に出て来てくれた。 それだけで、千秋は感無量だった。 思わず目が潤んで充血してくる。 しかしそれを奈緒に悟られないようにしながら、千秋は明るい声で言った。 「グラスワインでいい? 赤にする? 白にする?」 「ポリフェノール不足だから赤にしようかな?」 「うん、じゃあ私も赤にしよう!」 千秋はそう言って、赤のグラスワインを二つ注文した。 二人とも、酒はそんなに強くはなかった。 だから二人で会う時は、 いつも食べる方がメインになってしまう。 ワインが運ばれてくると、千秋が元気な声で言った。 「では、奈緒の転職を祝して、かんぱーい!」 「ありがとう~!」 二人はグラスをカチンと鳴らすと、 微笑んでそれぞれのグラスに口をつけた。
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