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「そんな事言っていいのぉ~? 陽人さんに言っちゃうぞ! 千秋が浮気心を出しているってね~」
奈緒が思わせぶりに言うと、
「浮気心じゃないもーん!」
千秋はそう言って抵抗してみせる。
千秋には、付き合って二年になる古賀陽人という恋人がいた。
陽人は千秋と同じ会社に勤めている38歳の男性で、千秋とは7歳離れていた。
二人が交際するきっかけは、陽人が千秋に一目惚れをしたからだった。
陽人は7歳年下の千秋の事が、可愛くて仕方がないらしい。
二人は、奈緒の目から見てもとても仲睦まじかった。
もちろん、奈緒も陽人に何度か会った事がある。
いつも美味しい物をご馳走してくれて、
奈緒にとってはお兄さんのような存在だった。
本当だったら、近々陽人に徹を紹介する予定でいた。
四人で食事会を開こうと話していた矢先、
突然あの事故が起きてしまった。
「それにしても、海で偶然出会って、その後面接で再会? まるでドラマの展開じゃん!」
「だよね。さすがに私も驚いたよ」
「でもさ、指輪を探しに行った方がいいよって言ったのは私だよね? つまり私が愛のキューピッド?」
「いやいやそこに『愛』はないから...あくまでも上司と部下だし...」
そこで千秋は、スマホで『深山省吾』を検索し、
彼の写真を画面に表示させた。
「それにしたってイケメンだわ~! マジで羨ましいっ! 毎日この顔を拝めるんでしょう? ちょいとお姉さん、会社に行くのが楽しみすぎやぁしませんかいっ? あんっ?」
鼻息を荒くした千秋が、なぜか変な口調になったので、
奈緒は思わず噴き出した。
「あははっ、千秋ったら変なのぉ~」
奈緒は腹を抱えて笑う。
どうやらツボにはまったようだ。
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