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その頃、CyberSpace.inc の秘書室には、 新しい机が運び込まれようとしていた。 一般的な会社では、秘書課は総務部に組み入れられている事が多いが、 CyberSpace.inc では『秘書室』として独立した部署になっている。 現在秘書を抱えているのは、 COOの川田公平と、 CFO、つまり最高財務責任者の君島健斗(きみしまけんと)の 二人だけだった。 秘書室は、省吾と公平の役員室の間にある。 今日はそこへ、奈緒が使う予定のデスクが運び込まれた。 省吾が出先から戻ると、 ちょうど前を配送業者が歩いていた。 省吾は机を運んでいる二人に追いつくと、 「ご苦労様です」 と声をかけてから、役員室へ入った。 今日はずっと外回りで、昼食を食べる時間もなかった。 役員室に戻った省吾は机の前に座ると、 すぐにパソコンを開いて表示されたデータを凝視する。 それと同時に、引き出しから栄養補助食品を取り出して、すぐに食べ始めた。 食べながら、今度は社内で買った缶コーヒーを開ける。 そこへノックの音が響き、公平が入って来た。 「あらあら今日は、うさぎちゃんのご飯ですか?」 公平がニヤニヤしながら言った。 「仕方ねぇよ...どこにも寄る時間がなかったんだから...」 省吾はそう言って、パサパサしたその固形物を、 缶コーヒーで流し込む。 そして、飲み込んでから言った。 「で、何かあったのか?」 「うん、いやね...ちょっとお前の耳に入れておきたい事があってさ...」 「なんだ?」 省吾は栄養補助食品(うさぎのえさ)を食べ終えると、 残っていた缶コーヒーを一気に飲み干してから公平を見た。
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