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「この前面接した麻生さんの事なんだけれど...あの日さぁ、彼女が遅刻して来たって言い張っているらしいんだよ...で、杉田君が困っていてさぁ...」
「ん? 誰がそんな事を言ってるんだ?」
「だから、人事部の名取君。あの日彼女が担当だっただろう?」
「へぇ...で、どのくらい遅刻したって?」
「なんだかよく分からないんだけれど、とにかく遅刻はしたらしい」
「へぇ...おかしいなぁ...。実は俺さ、あの日裏のカフェで麻生さんを見かけたんだよ。で、俺よりも先に店を出たから、遅刻したとは思えないんだが...」
「それ本当か?」
「ああ、間違いない」
「そっか...じゃあなんで名取君は遅刻したって言ってるんだ?」
「さぁ...なんでだろうなぁ?」
二人は一瞬押し黙った後、視線が合う。
そして、省吾が言った。
「そういやここ最近、秘書の採用面接に来る志望者が、ことごとく遅刻して来たよなぁ? それってちょっと変じゃないか?」
「そう言えばそうだな。遅刻とか態度が悪いとか...そんな報告がよく上がってくるよな」
「うん...ちょっと気になるな...。 公平悪い! 麻生さんの面談の日のカメラをチェックしてもらってもいいか? 録画はまだ残っているだろう?」
「至急調べてみるよ。なんかおかしいもんな...」
「頼んだぞ!」
「おうっ!」
公平が手を挙げて部屋を出て行くと、
省吾は眉間に皺をよせ、顎に指を当ててから何かを考えていた。
「まさか......な...」
省吾はそう呟くと、窓の外に視線を向けた。
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