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その頃人事部では、名取美沙が強い口調で部長の杉田に 文句を言っていた。 「なんで遅刻して来るような人が、CEO付けの秘書に採用されるのですか?」 「だからねぇ、それは役員面談で全員一致で決定した事なんだよ」 杉田は疲れたように答える。 何度説明しても美沙は納得せず杉田に詰めよるので、 杉田はほとほとうんざりしていた。 そして、美沙にもう一度確認する。 「本当に麻生さんは遅刻して来たのかい? そんなルーズな人には見えなかったけどなぁ...」 「本当ですよ。あの面接の日私が彼女を迎えに行ったら、部屋には誰もいなかったんですから! で、しばらくしてから息を切らして彼女が駆け込んで来たんですよ! 呆れちゃったわ。私は会社の為を思って、そんなルーズな人にCEOの秘書を任せても大丈夫なのかって言ってるんですっ!」 「名取さん、分かったからそんなに興奮しないで! その件はさっき上に報告しておいたから、あとは上が判断するだろう。君は通常業務に戻って下さい」 杉田のため息交じりの言葉を聞いた美沙は、更に言った。 「秘書だったら、私も秘書検定の資格を持っています。だから杉田部長から私を推薦して下さい! 私はこの会社に来てから、ずっと秘書業務を希望しているんですから!」 「はいはい分かりました......秘書枠に空きが出たら、その時は推薦してあげますから...」 杉田は美沙をなだめるように言った。 美沙はまだ納得がいかないといった様子で、 しぶしぶと自分の席へ戻って行った。
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