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車を出た省吾は、砂浜へ続く階段を降りると、
女性がいる波打ち際を目指した。
雪はかなり積もっていて、気をつけないと足を取られそうだ。
省吾が前を見ると、
女性はまた身体を屈め、足元をじっと見つめていた。
その時、麻生奈緒は小さなため息をついていた。
『やっぱりもう見つからないのかな...』
そう思いながらも、
もう少し探してみようと再び屈んで波打ち際を見つめる。
今夜から明日にかけては、季節外れの大寒波により、
大雪の予報が出ている。
雪が積もってしまったら、更に見つけるのが困難になってしまう。
奈緒は、できるだけ雪が降り積もらないうちに、
ソレを見つけなければと焦っていた。
舞い降りてくる雪はとても冷たい。
頬や手に直接触れると、体温がどんどん奪われていく。
念の為、暖かいダウンジャケットを着てニット帽をかぶってきたが、
その努力も虚しく、身体はどんどん冷えていった。
三月なのに、まさかこんな大雪になるなんて思ってもいなかった。
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