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エレベーターの乗り場は、20階までのものと、 それより上の階まで行くものとに分かれている。 CyberSpace.inc の本社は27階から31階までなので、 奈緒は上の階まで行くエレベーターの前に立った。 20階までしか行かないエレベーターの前には行列が出来ており、 そこへ並ぶOL達が、奈緒を羨ましそうに見ている。 その視線を横目に見ながら、 奈緒は降りてきたエレベーターへ素早く乗り込んだ。 エレベーターには数名の人しか乗っていなかった。 20階まで静かに通過した後は、 21階、22階と各駅停車のように止まり始める。 その度に一人、また一人と降りて行き、 最後は奈緒だけになった。 省吾の会社は、フレックスタイムやリモートワークを 積極的に取り入れているようだと、先日千秋から聞いていた。 だから朝早いこの時間帯に、CyberSpace.inc の社員に会う事は 少ないのかもしれない。 奈緒は前の会社のぎゅうぎゅう詰めのエレベーターを思い出し、 思わずフフッと笑った。 この会社はエレベーターまでもが快適なようだ。 その時、ポーン! という音が響き、 エレベーターが27階に到着した事を知らせる。 奈緒は、初出社の際27階にある人事部へ来るよう指示されていたので、 エレベーターを降りて人事部へと向かった。 廊下を進んで行くと、『人事部・経理部』という表示が見えた。 奈緒はそのドアをノックをしてから、 「失礼します」 と言って中へ入った。 すると、早出の社員が2~3人、奈緒に向かって 「「「おはようございます」」」 と笑顔で挨拶を返してくれた。 その瞬間、奈緒は、 『あれ? 皆感じがいい...』 と、少し驚いていた。
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