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なぜ奈緒がそんな風に思ったかというと、
以前面接に来た時の女性社員の態度が、
とても冷たかったからだ。
だから、他の社員達もクールなのかもしれないと、
少し覚悟をしていた。
最先端のIT企業なので、
皆合理主義者で無駄を嫌い、
前の会社のように、人情味溢れる温かい交流を
疎ましく思う社風なのかもしれない...
そんな風に想像していた。
しかし、今挨拶を返してくれた人達は、とても感じが良い。
『という事は、あの人だけがクールだったの?』
奈緒はなんだか嬉しくなり、
軽い足取りで人事部のデスクの方へ歩いて行った。
すると、人事部長の杉田がにっこりと微笑んで椅子から立ち上がった。
「麻生さん、お待ちしていましたよ! 今日からよろしくお願いしますね」
「おはようございます。こちらこそよろしくお願いいたします」
奈緒はそう言うと、深々と頭を下げた。
すると杉田が笑顔で言った。
「ここではそんな堅苦しい挨拶はいりませんよ! もっとラフにリラックスしてOKですからね! あっ、じゃあ早速人事部の二人を紹介しますね。こちらが水戸さん、そして、隣りが野口さん。二人とも頼りになる『素敵なお姉さん』ですから、何か困った事があれば、遠慮なく頼ってくださいね!」
水戸も野口は、とても優しそうな女性だった。
年齢は水戸が40代、野口が30代半ばといったところで、
どちらも結婚指輪をはめている。
落ち着いた余裕のあるその表情からは、
子供がいる主婦という雰囲気が漂っていた。
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