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「それじゃあ、麻生さんのデスクはここね! で、ロッカーはこっちよ! 来て!」
ベテランのさおりはそう言うと、窓際のパーテーションで仕切られた場所へ奈緒を連れて行った。そして、ドアを開けて中へ入る。
中にはロッカーが5つと、腰を下ろせるようなベンチが一つ置いてあった。
「ここは秘書専用のロッカールームね。今は私達三人だけのロッカーよ! 鍵もかかるから、着替えをする時は必ず鍵をかけてね。じゃないと、秘書室には男性社員が結構頻繁に出入りするから...」
「はい、わかりました」
「じゃあここが麻生さんのロッカーで、これが鍵ね! 荷物を入れたら、机の所まで来て!」
さおりはそう言うと、ロッカールームから出て行った。
『秘書専用のロッカールームがあるのね...』
奈緒はなんだか特別な気がしていた。
退職までの間、前の会社のロッカールームでは、
奈緒は徹と三輪みどりの噂話を、嫌という程聞かされていた。
話している本人達は、奈緒が入って来た事に気付くと急に押し黙る。
あの気まずい空気は、今でもトラウマだ。
それに比べたら、このロッカールームは天国のようだ。
それだけじゃない。
バッグに何かを忘れても、すぐに取りに行ける。
なんて便利なのだろう。
奈緒は素早く荷物をしまうと、
筆記用具を手にし、さおりが待っているデスクへと戻った。
「今日明日は私についてもらって一日の動きを見てもらうわね。
私と恵子ちゃんの仕事はほぼ同じパターンなんだけれど、深山さんには今まで秘書がついた事がないから、どういった形になるかは私達にも分からないのよ。まあそれはおいおい、麻生さんとボスでパターンを決めていくって感じなのかなぁ? まあとにかく最初は基本的な事だけを覚えるといいわ!」
「分かりました。よろしくお願いします」
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