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その時、恵子が戻って来た。
「あ~、もう君島さんのゴルフ自慢話に捕まっちゃったわ~。朝から勘弁してよ~!」
恵子は不満を漏らしながら椅子に座る。
「はいはい...愚痴を聞いてあげるのも、有能な秘書の仕事の一つですよ~なんて事、私は言わないわよ!」
さおりはそう言うと、お疲れ様と言って恵子の前にコーヒーを置いた。
そして奈緒にもコーヒーを持って来てくれた。
そこで奈緒はハッとして立ち上がった。
「すみませんっ、新人の私が入れるべきなのに...」
「いいのいいの。ここではね、飲みたくなった人が入れる~がルールだから!」
「そうよー、麻生さん、ここでは変な気は遣わなくて大丈夫だからぁ!」
恵子は笑顔で言いながら、早速コーヒーを飲んだ。
すると、さおりが言った。
「そうだ、麻生さん...あ、麻生さんっていうのもカタいわね! えっと奈緒ちゃん、奈緒ちゃんで行きましょう! いいわよね? 恵子ちゃん!」
「オッケーでーす!」
恵子が机から手を振る。
「私達の事も、さおり、恵子って呼んでいいからね!」
奈緒は思わず大きく頷く。
「でね、奈緒ちゃん! ここの飲み物は......」
さおりは、飲み物の置き場所や、洗剤などの備品の場所、
お客様へお茶を出す時の注意点を、丁寧に奈緒に説明してくれた。
必要な物全てはこの部屋に揃っていたので、
奈緒はびっくりする。
暗くてじめじめした給湯室など、ここでは無縁のようだ。
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