6

12/16
前へ
/342ページ
次へ
その時、恵子が戻って来た。 「あ~、もう君島さんのゴルフ自慢話に捕まっちゃったわ~。朝から勘弁してよ~!」 恵子は不満を漏らしながら椅子に座る。 「はいはい...愚痴を聞いてあげるのも、有能な秘書の仕事の一つですよ~なんて事、私は言わないわよ!」 さおりはそう言うと、お疲れ様と言って恵子の前にコーヒーを置いた。 そして奈緒にもコーヒーを持って来てくれた。 そこで奈緒はハッとして立ち上がった。 「すみませんっ、新人の私が入れるべきなのに...」 「いいのいいの。ここではね、飲みたくなった人が入れる~がルールだから!」 「そうよー、麻生さん、ここでは変な気は遣わなくて大丈夫だからぁ!」 恵子は笑顔で言いながら、早速コーヒーを飲んだ。 すると、さおりが言った。 「そうだ、麻生さん...あ、麻生さんっていうのもカタいわね! えっと奈緒ちゃん、奈緒ちゃんで行きましょう! いいわよね? 恵子ちゃん!」 「オッケーでーす!」 恵子が机から手を振る。 「私達の事も、さおり、恵子って呼んでいいからね!」 奈緒は思わず大きく頷く。 「でね、奈緒ちゃん! ここの飲み物は......」 さおりは、飲み物の置き場所や、洗剤などの備品の場所、 お客様へお茶を出す時の注意点を、丁寧に奈緒に説明してくれた。 必要な物全てはこの部屋に揃っていたので、 奈緒はびっくりする。 暗くてじめじめした給湯室など、ここでは無縁のようだ。
/342ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9346人が本棚に入れています
本棚に追加