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奈緒が新しい会社で働き始めて二日目の朝が来た。 奈緒のボス・深山省吾は、昨日まで北海道へ出張だったので、 入社以降、奈緒が省吾に会うのは今日が初めてになる。 だから、少し緊張していた。 昨日は、先輩秘書であるさおりと恵子から、 深山省吾についての話を色々と聞いた。 省吾は超多忙の為、スケジュール調整がかなり難しい。 いつも動き回っているので、連絡しようと思っても なかなか捕まらない。 仕事に夢中になると、他の事を忘れてしまい 食事を取り忘れる事も多い。 だから体調管理は必須だという事。 家へ帰る事が面倒で、役員室へ泊まりこむ事も多いらしい。 その為、寝癖のチェックには気を付けてねと言われる。 なぜなら、以前省吾が雑誌の取材を受けた際、 寝癖がついたままのボサボサ頭で写真に写ってしまい、 SNSで騒ぎになった事があるからだと言った。 それを聞いた奈緒は、 想像していた以上に、ボスである省吾が多忙な事を知った。 それでも、省吾は今まで秘書をつけずにほぼ一人でやっていた。 どうしても手が足りない時は、 さおりと恵子がサポートをしていると言った。 しかし奈緒が入って来た事により、 「「深山さんの育児からやっと解放される~!」」 二人はそう言って大喜びをしていた。 二人は、省吾の世話の事を『育児』と言った。 省吾の世話をするには、母親のような大きな愛が必要だと 二人は言う。 「深山さんは、有能過ぎる上に仕事を愛しているから、とにかく時間が足りないのよねぇ。だから他の事がおろそかになっちゃうのよ...」 さおりがため息交じりに言うと、恵子も言った。 「そうそう...ほら、いつだったっけ? 会社に省吾さんの恋人が乗り込んで来た事があったでしょう? アレ凄かったわよねぇ...」 「あったあった! そんな事!」 「えっ? 何があったのですか?」
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