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「省吾さんが初めてAIの分野に参入した頃にね、あまりにも仕事に没頭するあまり、当時の恋人をずーっと放置していたらしいの。でね、怒った恋人が会社に乗り込んで来たのよ!」
「うわっ! 凄いっ!」
「あの時は、部屋へ通すなって言われてたのに、誰かが勝手に役員室の場所を教えちゃったのよね! で、その後は修羅場!」
恵子がそう話すと、奈緒が聞いた。
「修羅場ですか?」
「そうなの...役員室から女の怒鳴り声が聞こえて来てね! この階にいた人達は、みんなハラハラしながら様子をうかがっていたわ!」
恵子はそう言って笑った。
「あれで懲りたのか、その後浮いた話は一切聞かないわねぇ...」
さおりがしみじみ言うと、
「そうよね。もう女なんて懲り懲りって思ってるんじゃない?」
恵子はそう言ってフフッと笑った。
「でもアイツがいるじゃない?」
「アイツはダメよ。深山さん、けむたがってるもん」
二人の会話を聞いた奈緒が聞く。
「アイツって誰ですか?」
するとさおりが言った。
「人事部の...あ、違った、今は総務にいる名取美沙って社員よ! 彼女は大手取引先の会長のお孫さんでね、二年前にここに来てから、ずっと深山さんを狙っているのよ!」
「えっ? 狙うって?」
「フフッ深山省吾の妻の座を狙っているの!」
「............」
奈緒が絶句していると、さおりは声を出して笑った。
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