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「あ...あの...ありがとうございます」 奈緒は咄嗟にお礼を口にした。 すると省吾が言った。 「いえ......何か落とし物ですか?」 「あ、はい...」 「落とした物は?」 「えっと...指輪です...」 奈緒の言葉を聞いた省吾は、一瞬驚いた様子だった。 それは、落とし物が彼の予想の範疇を越えていたのだろう。 「指輪ですかぁ...小さいから見つけにくいですよね...落としたのはこの辺り?」 省吾はそう言うと、傘をグイと奈緒に渡す。 奈緒は反射的に、つい傘を受け取ってしまう。 傘を手放した省吾は、ダウンのフードを被ると辺りを探し始めた。 それに気づいた奈緒が、慌てて言った。 「あっ、あの、大丈夫です...一人で探しますから...ご親切に、ありがとうございます」 奈緒はそう言うと、省吾に傘を返そうとした。 省吾はそれを制止すると、 「二人で探した方が早いですよ! それに早くしないと雪が積もってしまいますからね!」 そう言って微笑むと、再び足元を探し始める。
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