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奈緒はスケジュール表を置こうと、
デスクへ向かって歩き始めた。
ソファーの横を通り過ぎる際、ふと人の気配を感じる。
『えっ?』
その時、ソファーに誰かが横たわっている事に気付く。
よく見ると、それは省吾だった。
『まさか、昨夜からここへ泊まっていたの?』
奈緒はびっくりして省吾の顔をじっと見る。
省吾の口の周りの髭は、少し濃くなっているようだ。
やはりここへ泊まったらしい。
『どうしよう...起こした方がいいのかな? でもぐっすり眠っているみたいだし...』
省吾からはスヤスヤと寝息が聞こえていた。
省吾の今日の予定は、午後から一件外出があるだけだった。
午前中も特に会議の予定もなく、スケジュールには余裕がある。
しばらく寝かせておいても大丈夫だろう。
省吾の目元を見ると、うっすらとくまが出来ている。
『相当疲れているのね...』
そう思った奈緒は、あと少し省吾を寝かせておく事にした。
そして、反対側のソファーに置かれていたコートを、
そっと省吾の身体に掛ける。
5月とはいえ、うたた寝で風邪でも引いたら大変だ。
その後奈緒は、机の上にスケジュール表を置いてから、
部屋の出口へ向かった。
その時、突然奈緒の手首を誰かが掴んだ。
奈緒が振り返ると、省吾が手を伸ばして奈緒の手首を掴んでいた。
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