7

7/25
前へ
/342ページ
次へ
奈緒はスケジュール表を置こうと、 デスクへ向かって歩き始めた。 ソファーの横を通り過ぎる際、ふと人の気配を感じる。 『えっ?』 その時、ソファーに誰かが横たわっている事に気付く。 よく見ると、それは省吾だった。 『まさか、昨夜からここへ泊まっていたの?』 奈緒はびっくりして省吾の顔をじっと見る。 省吾の口の周りの髭は、少し濃くなっているようだ。 やはりここへ泊まったらしい。 『どうしよう...起こした方がいいのかな? でもぐっすり眠っているみたいだし...』 省吾からはスヤスヤと寝息が聞こえていた。 省吾の今日の予定は、午後から一件外出があるだけだった。 午前中も特に会議の予定もなく、スケジュールには余裕がある。 しばらく寝かせておいても大丈夫だろう。 省吾の目元を見ると、うっすらとくまが出来ている。 『相当疲れているのね...』 そう思った奈緒は、あと少し省吾を寝かせておく事にした。 そして、反対側のソファーに置かれていたコートを、 そっと省吾の身体に掛ける。 5月とはいえ、うたた寝で風邪でも引いたら大変だ。 その後奈緒は、机の上にスケジュール表を置いてから、 部屋の出口へ向かった。 その時、突然奈緒の手首を誰かが掴んだ。 奈緒が振り返ると、省吾が手を伸ばして奈緒の手首を掴んでいた。
/342ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9345人が本棚に入れています
本棚に追加