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「待って...まだ行かないで......」
省吾はそう言うと、奈緒の手首を掴んだまま身体を起こした。
そして、大あくびをした後、奈緒に言った。
「寝ちゃってたよ、ごめん...今日からよろしくね!」
「よっ、よろしくお願いいたします」
奈緒はそう言いながら、まだ掴まれたままの手首を
困ったように見る。
すると、省吾はやっと気づいたようで漸く奈緒の手を離した。
「昨日最終便で帰ってここに寄って、遅くなっちゃったからそのまま泊まったんだ...」
省吾はそう言うと、ソファーの隣をポンポンと軽く叩いて、
奈緒に座るよう指示した。
奈緒は、「失礼します」と言って隣に座る。
そこで、
「指輪は見つかった?」
省吾はニッコリ笑って奈緒に聞いた。
奈緒はびっくりして、思わず目を見開く。
省吾が仕事に関してではなく、あの海での事を聞いて来たので
驚いていた。
「あ、いえ......あの後はもう探さなかったので...」
「どうして? 大事な指輪だったんだろう?」
「......いえ...もういいんです...」
奈緒がもう触れてほしくないという素振りで言ったので、
省吾は少し意外な気がした。
『男とヨリが戻っていないのか?』
ふとそんな考えが頭を過る。
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