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奈緒の暗い表情を見た省吾は、 それ以上の追及はしなかった。 奈緒はソファーから立ち上がってデスクまで行くと、 先ほど机の上に置いたスケジュール表を手にしてから言った。 「本日の予定は、午後二時よりTRUソリューションイノベーター様との打ち合わせ、そして午後四時からは経営企画会議となっております」 「ん、ありがとう。今日は少しゆっくり出来そうだなぁ...あ、そうだ、麻生さんのスマホの番号と、メッセージアプリの連絡先を教えてもらってもいいかな?」 「えっ?」 奈緒が驚いた顔をすると、 「申し訳ないけれど、急ぎの用件や外出先からは、君の携帯に直接連絡させてもらうよ。もし君が電話に出られない時は、メッセージを送るようにします。その際の通信費は、会社負担で給料に上乗せしますから...」 省吾はそう言って立ち上がると、デスクまで行き、 スマホを持って戻って来る。 奈緒はそういう事ならと、ポケットからスマホを取り出した。 そして、二人は連絡先を交換した。 「とりあえず、午前中は入力業務をお願いしてもいいかな? 毎月定期的に上がって来るデータなんだけれど、君がやってくれると助かるよ。やり方は、さおりさんに聞けば分かるから...」 「分かりました」 省吾は棚に置いてあるA4サイズの紙の束を持ってきて、奈緒に渡した。 奈緒はそれを受け取ると、気になっている事を省吾に聞いた。 「CEOの呼び方についてなのですが、『深山さん』で本当によろしいのでしょうか?」 奈緒は、人事部長の杉田やさおりから、 省吾の呼び方は名字で大丈夫だと聞いていた。 しかし本人へきちんと確認しておきたかった。 「うん、それでOKだよ!」 「外部の方がいらっしゃる前でも?」 「うん、問題ない」 省吾はそう言うと、デスクの椅子に座った。 「分かりました」 奈緒はそう返事をしてから、また省吾に聞いた。
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