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「あの...よろしければ何か朝食を買って来ましょうか?」
奈緒の意外な申し出に、省吾が顔を上げる。
その時省吾のお腹が、
グルグルキュルルル~~~
と鳴ったので、思わず奈緒は笑ってしまった。
「すみませんっ....」
「グッドタイミングだな! じゃあ折角だから頼もうかな...」
「何がよろしいですか?」
「下のコンビニで、卵サンド一つと鮭おにぎり一個お願いしていい?」
「承知しました。お飲み物は?」
「コーヒーを入れて持って来てくれると助かるかなぁ...」
「分かりました。じゃあすぐに行ってまいります」
奈緒がそう言うと、省吾は財布をポケットから出して、
千円札一枚を奈緒に渡した。
奈緒はそれを受け取ると、
一礼してから役員室を後にした。
ドアがパタンと閉まるのを見届けた省吾は、
ふと物思いに耽る。
省吾はただ単に、あの時の指輪が見つかったかどうかを
気軽に聞いたつもりだった。
それなのに、奈緒が思いつめたような表情をしたので、
気になっていた。
『あの指輪には、何かあるのか?』
省吾は答えがわからずに悶々とする。
しかし、すぐに気持ちを切り替えると、
目の前の仕事を終わらせてしまおうと、パソコンへ集中した。
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