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ノックをすると、返事がない。
しかし中から声がする。電話中だろうか?
勝手に入ってもいいのか悩んでいると、
スマホを耳に当て会話中の省吾がドアを開けてくれた。
奈緒は声を出さないようにペコリとお辞儀をしてから、
部屋の中へ入る。
そして、机の上に買って来た物とコーヒー、そしてお釣りを置いた。
再び椅子に座った省吾は、
ニッコリと笑ってからコクリと頷く。
どうやら「ありがとう」の意味らしい。
奈緒は再びペコリとお辞儀をしてから、ドアへ向かった。
歩きながら、電話の会話が聞こえてくる。
「だからそれだと意味がないんですよ! 全部無人なんですよ? 建築現場で無人で重機を動かすには、それ相応の広さがないと...実証実験では、まずは事故を起こさないように最善の注意を払わないとなんです......」
省吾の苛立った声が響く。
『建築現場で無人で重機を動かす?』
そのとてつもない内容を聞いて、奈緒は驚く。
『人工知能って、そんな所まで進んでいるのね...』
奈緒は改めて省吾の仕事の凄さを認識した。
そんな凄い人の秘書としてこれから働くのだ。
自分ももっと色々と勉強しないと...
奈緒はそんな事を思いながら秘書室へ戻った。
その日の午前中は、いくつかの電話応対をした以外は、
データー入力業務に集中した。
集中したお陰で、午後にあと少し入力すれば終わりそうだった。
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