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「うん、ゼネコンの秘書は凄かったわ...とにかく接待接待! 接待漬けの毎日! だから手土産はあれを用意しろ~だの、このお芝居のチケットを取ってこい~だの、しょっちゅう細かく指示されてね。いつも駆けずり回ってたわ! 時には人相の悪いアッチ系の人や、役員の愛人なんかも会社に来ちゃったりしてね...そりゃあもう大変だったわよ! それに比べたら今は天国よ!」 「それは大変そうですね~! 一概に秘書と言っても、業種によって対応が様々なんですね...」 その時恵子が言った。 「奈緒ちゃんも私も、秘書デビューが今の会社で良かったかも! 役員達は手の掛からない人たちだし、上司の秘書室長がさおりさんだし...もうね、言う事ないわ! ラッキー過ぎる! だからね、私は結婚しても絶対辞めないわ!」 「えっ? 恵子ちゃん、結婚の予定あるの?」 さおりが驚いた顔をして聞いた。 「ううん、まだでーす! もしそうなったらっていう話です!」 「びっくりしたぁ。まあでも、結婚しても続けてくれるなら安心だわ!」 さおりはそう言って笑った。 そんな二人を見て、奈緒も微笑む。 この会社は、結婚しても働き続けられる場所のようだ。 その証拠に、奈緒が初日に会った人事部の二人も既婚者だったし、 他の部署にも結婚指輪をはめた女性が大勢いる。 さおりから聞いた話によると、時折子連れで出社する人もいるらしい。 共働きの夫婦で、保育園などが急遽インフルエンザなどで休園になると、 子供を会社に連れて来てもいい事になっているそうだ。 そして、年内には社内に託児所が設けられる予定だ。 今着々とその準備が進んでいる。 この会社は、働く人の事を第一に考え環境を整えてくれる。 奈緒が前にいた会社も、そういう面では割と先端を行っていたが、 この会社とは比べ物にならない。 明らかに CyberSpace.inc の方が、優良企業だった。
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