第3章 錯誤(さくご)と錯覚

4/4
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
そして、それ以来、真己と日和が言葉を交わすことはほとんどなくなった。 表向きは挨拶をしたり、互いに体裁を装っていたが、段々距離が開いていった。 真己は少しずつ孤立していった。 そして、ふと教室の女子生徒達を見ると、 クラスの女子生徒達の中には、既にいくつかのグループが出来上がりつつあった。 お洒落や恋バナが大好きなリアル充実してます女子グループ 部活やスポーツに励む、体育祭や文化祭などを盛り上げてくれそうな女子グループ 漫画やアニメなどが大好きな推し活に生きがいを見出す女子グループ などなど―― いつの世も女性はグループを作って集まりたがる生き物だ。 (今更、どこかのグループに入れてもらえる気もしないな……イジメられないだけマシだけど。でも、それを除いたら、中学の時と大して変わらないよ……) 高校デビューは見事に失敗したと、真己は思った。 そして、今後のことに頭を巡らしていると、 「内海さん」 突如話しかけられて、声がした方角を向くと、お金持ち内進生女子グループの何人かが真己の席に近寄ってきた。 日和に”ばーか”と言われて、顔を真っ赤にしていた女子グループの子達だったが、真己は知らない。 「有栖川(ありすがわ)さん、どうかしたの?」 有栖川と呼ばれた女子生徒は、このグループのリーダー的な存在だった。 制服こそ皆一緒でも、上等なアクセサリーをさり気なく身に着けており、時計や靴は如何にも高級品のようで、日和とまではいかなくても、そこそこの美人だった。 スレンダーな体型でスタイルもよく、化粧を丁寧に施しており、髪は艶があるショートカットで、見た目からして裕福そうな香りが漂っていた。 「ううん、特に用はないんだけど。今日一人でいるからどうかしたのかと思って」 「橘さん、また保健室だよね?」 「うん、そうみたいだね……」 今まで話したことのないクラスメイトから、突然話しかけられて、真己は不思議に思っていると、 「そういえば、橘さんって言ったら、ちょっと変わってるよね」 「え?」 真己は彼女達の会話の意図が分からなかった。 「あ、内海さんは高等部からの外部生だから、知らないか」 「私達、あの人と中等部から一緒なんだけど、橘さんって誰とも関わろうとしないんだよね」 「そうそう。綺麗だから最初は皆寄ってくるんだけど……何か澄ましてて感じ悪いし。中学時代なんか友達一人もいなかったよね」 「高等部の先輩達に親戚がいたみたいだから、その人達とは交流してたみたいだけど」 「だから、橘さんが内海さんと話してるの見て、ビックリしちゃった」 「あんな笑ってるの初めて見たよね」 「橘さんってどんな人なの?」 「ど、どんなって……」 真己は言葉に詰まった。 流石に男性であるとは言えないし、言うつもりもない。 そして、友達と思われていなかったことも、今はただショックで、言いたくはなかった。 「別に……普通の子だよ」 真己は苦し紛れに、何とか言葉を絞り出した。 「普通?!」 「うそー! 絶対なんか秘密がありそう」 (皆、薄々気付いてるじゃない……) 真己はバレるのは時間の問題だと思い、友達とは思われていないけれども、日和が心配になってきた。 そして、自分の知らない日和の話を聞いて、彼はどんな中学時代を過ごしてきたのか気になってきた。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!