9人が本棚に入れています
本棚に追加
4
それから10年以上が経った冬の日、わたしは小刀を携えて、雪がちらつく山中を急いでいた。
この時期は日が短く、あっという間に暗くなってしまう。それなのに、雪の重さで寺の屋根の一部が落ちてきて、その片づけをしていたら日が傾き始めてしまった。ただでさえ、何年か前の大雨による地崩れで地形が変わり、往来に時間がかかるようになってしまったというのに。普段は人の行き来がある山道は避けて移動するのだけれど、この日ばかりはそうも言っていられなかった。
最初のコメントを投稿しよう!