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 それから10年以上が経った冬の日、わたしは小刀を携えて、雪がちらつく山中を急いでいた。  この時期は日が短く、あっという間に暗くなってしまう。それなのに、雪の重さで寺の屋根の一部が落ちてきて、その片づけをしていたら日が傾き始めてしまった。ただでさえ、何年か前の大雨による地崩れで地形が変わり、往来に時間がかかるようになってしまったというのに。普段は人の行き来がある山道は避けて移動するのだけれど、この日ばかりはそうも言っていられなかった。
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