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 昼過ぎに、魚を捕るため沢へ降りた。  普段であれば澄んだ水の中に魚影が簡単に見つかるのだけれど、この日はなかなか見当たらず、下流へ降りていくうちにとうとう滝まで行き着いてしまった。  ここまで来たら諦めるしかない。そう思って引き返そうとしたときだった。滝の下に、人の頭髪のようなものが見えた。  咄嗟に屈んで身を隠した。恐る恐るもう一度覗いてみる。30尺はあろうかという高さの滝の下、やはり藻などではない、人の頭だ。体もついていて、うつ伏せの姿勢で左半分は水に浸かっている。まだ小さく、子供かもしれない。誤って落下したのだろうか。さらに目を凝らすと、背中が小さく上下している。まだ息がある。わたしは近くに他の人間の姿がないことを確認してから、滝の下へ飛び降りた。
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