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寺のそばで育てたカブと小松菜、そして山で採れた豆と木の実を煮て作った汁物を器によそい、ゼンキチの口元へ匙を運ぼうとすると、彼は顔をそむけた。
「食欲がありませんか?」
「……自分で食べられるよ」
ゼンキチはわたしの制止を振り切って体を起こすと、器と匙を強引に奪い取った。目を丸くするわたしに、彼はばつの悪そうな表情をした。
そこでようやく合点がいった。彼から見ればわたしは同年代の少女だ。思い返せば、村にもわたしの看病を拒む男の子はいた。
「食べ終わったら、この薬も飲んでください。痛みが和らぎます」
薬草を調合した丸薬を彼のそばに置いて、わたしも自分の食事に入ることにした。
体力を失っていたのだろう、彼は食事を終えるとすぐに寝息を立て始めた。
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