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何を思って先生はそんなことをしたのか。
オレの気持ちを受け入れられなかったから、その罪滅ぼしのつもりなのだろうか。
彼を受け入れた心が痛い。
信じていたのに。
信じていたかったのに。
オレは幸せの絶頂から地獄へと突き落とされた。
けれど、彼の話はそれでは終わらなかった。
『だけど僕は、君を愛してる。確かに言われて君に会いに行った。偶然を装って近付き、仲良くなった。だけど君と会ううちに僕は君に惹かれ、気づいた時には君を好きになっていた。いけないと思ったよ。本当は君を好きになってはいけなかったんだ。僕はただ、君の心の傷が癒え、新しい恋が出来るように見守らなければならなかったんだ。だけど止められなかった。止められず、君を自分のものにしたいと思った。あいつが出来なかったのに、だから僕がしたらダメなのに・・・』
苦しそうな彼のその告白。だけどオレには意味が分からなかった。
なぜ先生はそんなことを彼に頼んだのか。
絶望のどん底で麻痺した心は、彼の言葉が理解出来ないし、したいとも思わなかった。
どうでもいい。
もう聞きたくない。
早くこの苦しみから逃れたい。
だからオレは彼の話が終わる前に、その場から逃げようと思った。だけどその手を掴み、彼は叫んだ。
『あいつは死んだんだっ』
その言葉に、オレは瞬時に我に返る。
『本当はあいつも君が好きだった。だけど君は生徒であいつは教師。だから思いを伝えられない。だけどもし、君が卒業まで思ってくれていたら、その時に告白したい。あいつはそう言っていたんだ』
彼のその言葉にオレは振り向く。
『君はずっと変わらずあいつを好きでい続けた。そしてそれをあいつも感じ取っていた。だから卒業式の日、あいつは君と約束したんだ。君に思いを打ち明けるために・・・好きだと告白するために・・・』
先生との約束。
だけど、先生は・・・。
『君と同じくらいあいつも君を思っていた。だからあいつもその日を心待ちにしていたんだ。でも行けなかった』
そう。
先生は来なかった。
『あいつはちゃんと、君との約束の場所に向かったんだ。だけど途中で倒れて、そして病院に運ばれた』
初めて聞く、あの日のこと。
心臓が痛いくらいに脈打つ。
倒れた?
先生が?!
そう言えばさっき・・・死んだ・・・て・・・。
『そこで検査して病気が見つかった。だけどもう・・・手遅れだったんだ』
顔から血の気が引いていくのが分かる。
息が苦しい。
『もう手の施しようがないほど病気は進行していて、あとはどれだけ穏やかな時間を過ごせるかだった。だからあいつも、延命ではなく緩和治療を選んだ。そして・・・君のことを諦めた』
目の前が暗くなって立っていられない。そんなオレを支え、彼が近くのベンチに座らせてくれる。
『死ぬのが分かって、君に告白などできない。だったらこのまま何も言わずに別れた方がいい。あいつはそう言ったんだ。だけど思いはそんな簡単に割り切れるものじゃないだろ?それに約束を破られたと思っている君のことも心配だ。だから僕に頼んだんだ。君の様子を見てきて欲しい、と』
そうして大学でオレを探し、密かに影から見ていたのだと言う。
『隠れて写真を撮って、あいつに送ってたんだ。だけど君はいつも暗い顔をしていて・・・それが気になっても、どうすることもできなくて。そうしたら君がカフェでバイトを始めて、チャンスだと思った』
大学近くの駅前のカフェ。オレがバイトをしているのを見かけたのは偶然だったらしい。
多少自由が利く仕事だったために時間を見繕ってはオレの大学に来ていたという彼は、オレに会えない日も多々あったという。だけど病床の親友の為に、できる限り大学へ足を運んだと言う。そんなある日、バイトするオレを見つけた。
『これで直接話すとができる。ただ見ている時よりも詳しく君のことを話してやれると思ったよ。それにもし仲良くなれたら、もっとあいつのために何か出来ると思ったんだ。そしてその通り、君はあいつの危機を何度も救った』
その言葉に、オレは彼を見る。
『覚えてるかな?以前励ましの動画を取らせて欲しいって頼んだのを』
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