たまにはこんなファンタジーも

それを考えたら、これはオレが一度目に過ごした世界と違う世界だと考えていいんじゃないかな。だって、全く同じになんてできないし。今この瞬間のオレの行動が、未来を変えてしまってるかもしれないんだから。

だったら、先生の未来を変えてもいいのではないか？

全ての未来を変えたいわけじゃない。変えたいのは先生の死。彼は病院に運ばれた時にはもう手遅れだったと言っていた。だったらもっと早くに病気が見つかっていたら、助かったのかもしれない。

でも病気を早く見つけるって、どうすればいいんだろう。
検診を受ける？
でも教師なんだから、年に一度の健康診断は受けていたはずだ。でもそれでは分からなかったのだから、もっと詳しい検診･･･人間ドック？がん検診？

だけどあんまり早くしても、病気自体が発症していなかったら見つけることは出来ないから、既に発症していて、だけど手遅れになる前に見つけないと。

進行性の病気だと見つかってから死までの期間があまりに短くて難しいけど、普通のだったら発症してからそんなにすぐ手遅れになることはない。だから、先生と出会ってから検査を受けてもらえば十分間に合うと思う。逆にその前に受けてもらっても見つからないかもしれないし、先生と出会ったのが亡くなる二年前だから、時期的にはいいかもしれない。

だから今焦っても仕方がない。

本当はすぐにでも会いたい。
身体は子供でも中身は十分大人だから、その知識を使えば先生を探すことは出来ると思う。だけどオレはそれを我慢した。だってオレが余計なことをして、先生の未来の本筋が変わってしまったら会えなくなってしまうかもしれないからだ。

変わったら変わったで、また違う出会いをすればいいかもしれない。でもやっぱり、未来を変えるというリスクは出来れば避けたかったのだ。
これはもう違う世界。
そう思っても、それによって悪い方に向かってしまうことがあるかもしれない。それを思ったら、変えるのは最小限にしたい。

だからオレは、前と同じように先生と出会う時を待つことにした。

先生と出会ったのは高校2年の時だ。先生がうちの学校に赴任して来たのが始まり。
今回先生には一切干渉してないから、先生はちゃんと前と同じ高校教師になると思う。だからオレも前と同じ高校に進学して待てばいいんだ。

だけど、オレちゃんとオメガだよね･･･？

オレは中２の第二性診断でオメガと診断されて、あの高校に入ったのだ。オメガクラスがあるから。つまりオメガでなかったら、あそこには行かないわけで･･･。

大･･･丈夫だよね･･･。

小6の現在、当然オレにはオメガの兆しはない。診断の時だって全く予想してなかったから、オレはもちろん周囲もすごく驚いたのだ。だからちゃんと診断をしなければ分からないのだけど、だからこそ心配になる。

オレの両親は父がアルファで母がベータ。1個上の兄はベータで3個下の妹もベータだ。二人ともまだ診断前だけど、前の世界ではそうだった。
親戚はと言うと、母方は典型的なベータ一族で、アルファもオメガもいない。だけと父の方は祖父がアルファで祖母がオメガだ。だけど全体を見るとアルファは3割くらいであとはベータ。オメガは番としてはいるけれど、その子供たちには現れず、血筋的にはいなかった。

だからオレも、当然ベータだと思われていた。

アルファだとしても父を始め、親戚もみんなその力はあまり強くなく、オメガと番になったところにだけ時々アルファが出るくらいであとはベータだし、社会的にもそれほどの成功者はいない。父もアルファではあるけれど、普通に会社員をしている。だから母がベータな上に平々凡々なオレは当然ベータだと思われていた･･･いや、今世は一度、テストで満点を連発した時にアルファかも知れないと両親を期待させてしまったので、もしかしたらアルファと思われているかも･･･。

だったらごめん。

心の中で両親に謝った。

でも本当にオメガだろうか。前がそうだったからって本当にそうなのかな。まだ少し、この世界が逆行した世界だという確信が持てていないせいか不安になる。