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気づいたらかぎなれた匂いのする部屋にいた。足元があったかくなるカーペット、ときどきごはんをくれるお兄さんの声。
「にゃーお」
ピノちゃんの声が聞こえた。私……おうちに戻ってこられた?
こわごわネットの外を見たら、たしかに私はおうちのリビングにいるみたいだった。
やったぁ戻ってきた! またピノちゃんとチロルちゃんといっしょにいられるー!
意気込んでゆるんだネットの出口から顔を出そうとしたら、お母さんに思い切りこめかみをつかまれた。
「ショコラ、目薬が先です」
え、メ? メ……なんて? とにかくここから出るの!
むちゃくちゃにもがいたけれどお母さんは離してくれなかった。私の右目を無理やりこじあけて水みたいなものを目の中にぽっちょん……
痛いーやだやだ! もう片方の目もぽっちょんするとかぜったいやだー!
両目にメなんとかをされた私は猛ダッシュで逃げた。もうお母さんは追いかけてこなかった。
ベッドの下から全身の毛を逆立てたチロルが姿を見せた。メなんとかでびしょびしょになった私の顔を丁寧に舐めてくれる。
ホッとしたらまたくしゃみが出た。チロルもぷくしゅん!と鼻水を飛ばす。
チロル、私はお姉ちゃんだからビョウインに行ってきたんだよ。チロルは行かなくていいってお母さんが話してたよ。よかったね、チロル。私、がんばったよ。
もう何回もビョウインに行っては帰ってきてるピノちゃんがのそのそと近づいてきた。私とチロルの頭を舐めてくれる。ピノちゃんはすごいな。もう二度とあんな目には遭いたくない。
一眠りしてしばらくしたら、階下からお皿の重なる音が聞こえた。ごはんの時間だ。おなかすいた、そんなことも忘れてた。
うきうきしてお母さんの脚にすり寄ったら、お母さんは笑顔で私を見下ろしていた。
そしてまた捕まった! 目薬ぽっちょん! お母さんのうらぎりもの!
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