目薬ぽっちょん

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 ぷっくしゅん、とくしゃみをしたら体がふるえた。  いっしょに寝ていたチロルも「ぷくしゅん! ぶくしゅん!」とくしゃみを連発した。  鼻水が垂れている。私がぬぐってあげる。チロルが気持ちよさそうに目を細める。  私の鼻水も垂れてきた。ちょっと前から止まらない。手の甲でぬぐってたらチロルが体を寄せてきた。  心地よい眠気が下りてくるのに、また体の内側からふるえてきてくしゃみを連発した。  だってこの部屋、寒いんだもん。下の階はピンポーンとか車の音がうるさいから寝心地悪いし。  なんだか片目が開けづらい。眠いからかな。部屋の外からスリッパの音が聞こえてくる。  ピノちゃんが私の顔をのぞいたかと思ったら、お母さんもいっしょに来ていた。無理やり私の鼻をティッシュでぬぐう。  やだ、やだってばと抵抗してたら思い切り腕をつかまれた。 「おいで、いっしょに病院に行こう。おくすりもらおう」  その瞬間、全身の毛が逆立った。  ビョウイン! ぜったいやだ!  お母さんの体の向こうに逃げていくチロルの姿が見えた。ずるい先に逃げるなんて!  妹のチロルはものすごく勘がするどくて逃げ足も速い。いつも私は出遅れる。ピノちゃんはお姉ちゃんだけど割とどんくさいからすぐに捕まる。  私はちがう、なにがなんでも病院には行かないからー!
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