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遺体の入った袋は、エコバッグとして当時の政府が全ての世帯にひとつづつ配布し税金の無駄遣いと揶揄された品物で、犯人の割出しには役立たず。包まれていた高級ブランケットは被害者宅の物であり、指紋も全く検出されていない。 廊下突き当たりにある共同洗面台は、右寄りに設置されており、その左手には腰高の窓があって換気目的で使用されている。 その下の空間は、以前洗濯機が置かれていた名残の洗濯機パンが露出しているだけで、時々一時物置き場のように使用されていたという。 発見当時、桜も咲こうという季節だがまだ肌寒い季節にもかかわらず、窓は全開だった。というのも、窓の先は人も入れないような狭さで、背中合わせにすぐ住居があるのでそこから侵入することは子どもでも不可能な古い密集住宅地だったからだ。それこそ火の手が上がれば、この地帯は一気に丸焼けになるだろう。 それに、外国人も多いここ辺りでは世界的な感染症蔓延の対策としても、また独特の異臭を逃がすためにも近年四六時中窓は開放されていたという。 セキュリティーなど考えても自衛以外無駄なこの地区は、下町なのに色々な意味で国際化はひどく進んでいた。
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