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そうこうしているうちに、手術の日を迎えた。
家族が見守る中、麻酔科医がやってくる。
怖い……
麻酔をかけられ、目を覚ましたときには私はもう声を失っている……
怖い……声を失いたくない……
目からボロボロと涙がこぼれてきた。
もう自分の声帯をふるわせて声を出すことができなくなる。
最後に……最後に……私は何を言えばいいのだろう。
自分の喉をそっと手で触れてみた。
声を出してみる。
「あー」
指先に、ふるえが伝わってきた。
ふるえる、ふるえている、私の声帯がふるえている……
さようなら、私の声帯……
家族は私を見て、涙を流している。
私は家族一人一人の顔を見つめながら、
「ありがとう……」
と声帯をふるわせた。
これが今の私にできる精一杯だった。
「それでは処置室に行きますので、ご家族の方はここまでとなります」
私はストレッチャーで運ばれていく。
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