私は声帯を失った

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喉頭は、口から入った空気は肺に送り、食べ物は胃に送る、いわば分岐路のような場所。 手術で喉頭を全摘出するため、食道は胃への一本道となる。 誤嚥することは、これでなくなる。 気管は、声帯ではなく体の外にあけた穴へとつながれる。 口や鼻を塞がれても、私は息ができるということになる。 口や鼻を使わずに息ができるという感覚が想像できない。 私は麻酔科医と最後の言葉を交わす。 「ありがとうございます。どうか、よろしくお願いします」 「わかりました。それでは、麻酔をかけます……」 * * * * * * * * *
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