私は声帯を失った

1/16
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
主治医から告知された。 「喉頭(こうとう)がんです」 頭が真っ白になる。 自分ががん患者になったという事実は受け入れ難かった。 「……あ、あの……治るんですよね?」 「……進行していますが、治療は可能です」 「やっぱり、手術とかするんですか?」 「これからの経過次第ですので今はなんとも言えませんが、手術は選択肢の一つとなります」 こうして、私は抗がん剤と放射線治療を受けることになった。 まずはがんを小さくし、それから切除するとのこと。 思えば、声のかすれはあった。 何となく食べ物が飲み込みにくいこともあった。 鼻詰まりの感じもあった。 まさか、それががんによるものだったなんて…… 抗がん剤と放射線治療だけで治ればいいのだが。 * * * 数カ月の治療の後、今後の方針が告げられた。 「手術をした方がよいでしょう」 大きな手術になるということで、家族を呼んでの説明となった。 私のがんは進行しており、喉頭を全摘出するという。 主治医は告げる。 「ただし、手術後は声を出せなくなります」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!