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如月も暗い話を、深いため息で吹っ切るようにした。
「美沙さんも今は、バトルで活躍しているようだが」
それには、美沙も微笑んで話す。つらい出来事があったときに、励まして仲間に誘ったのが地元の滑走騎士団。
「自分の居場所かな。ここでは地球より身体が軽く動く」
ネクストアースは地球より重力も弱いらしいが、普通には気づかない。体力と運動能力に差があるのだ。
「それより。会って、教えたかったんだ。夜の爪という組織が影響力のある人間を操ろうと狙っている」
『夜の爪』は、指導者の力を操り、思う通りに動かして、世界征服という野望を持つらしい。その組織を如月は追っているという。
「AI時代にアニメみたいな話だな。権力争いに興味はない」
騎士と呼ばれるのは大衆からも支持された喧嘩だからだ。権力が何とかとは相反すると美沙は思っている。
如月は、ちょっと考えてから話す。
「地球合衆国が成立するだろう。夜の爪と関係がないか調べている」
「あれも金銭至上主義の首都同士で決めたことだからな。結局はわずかな人間しかいない」
そこだよ、と如月は言う。
「夜の爪は世界の人間を支配するために、大衆へ影響力のある滑走騎士団を仲間にしたいらしい」
「ご冗談を。大衆の支持があれば、受け入れらるはずだが」
世界征服などと戯言をいうのは相手にもされないだろう。
しかし、如月が首を振る。
「世界の滑走騎士団は、美沙さんの言葉で動く。地球合衆国成立で動き出すはずだ」
美沙の影響力を利用したがってる者が狙っているらしい。
「大袈裟だ。権力はない。思うことを言って、やりたいようにしているだけだ」
それで、いつの間にか女王と呼ばれてもいた。バトルの個人戦で優勝したのだが、女王などと呼ばれ続けるとは思ってみなかった。
(仲間で勝ってこそ、強いだからねー)
所属する沙淡は、まだ優勝もしてないが、なぜか注目もされている。美沙が気付かない理由があるらしい。
バトル協会の成立も、美沙が滑走騎士になってからだ。それまでは権力争いに巻き込まれてもいた。美沙の口癖は「喧嘩はなるべくしないほうがいい」それに共感する人々が増えた。
一般市民を犠牲にするより、権力者になりたい者は、自分自身で戦え、というのを忘れかけてた時期だ。
どうやら、そのあたりに女王と呼ばれる理由はあるようだ。
美沙はヘルメットをかぶる。如月も立ち上がった。
「気をつけてな。また連絡する」
「次会うときに詳しく聞こう。メールは?」
連絡先を交換すると、ローラーを転がして別れた。
・
古代から反地球とかトロヤ惑星が予想されている。ティアの存在していたのは科学的に証明もされた時代。
それならと、人類は惑星を作ってしまったのだ。火星よりは近い距離にテラフォームされたネクストアースが誕生したのも昔のこと。
惑星間の戦争でネクストアースが勝った。それから2世紀が経つ。美沙は、歴史として知っているだけだ。
放射能に覆われた母星へ、たぶん、戻れないだろう。それでも、ネクストアースと同じ公転軌道にある地球では、いまも衛星の月が回っている。
2へ続く
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